2011年6月27日月曜日

近畿地方EV視察(1)

今日は大阪のコンバートEVを手掛ける「EVジャパン」の代表、NCオート社長の西田さんを訪ねました。
こちらでは実に様々な試みを行っています。特に力を入れているのが
・オート三輪やトライクのEV化
・軽トラックのEV化
です。

大阪もちょっと外れまで行けば農村地帯なのだそうです。
農村地域では日常の足として軽トラックが多く使われています。
畑と自宅の往復だけ走れればOKという方も多く、その場合はバッテリーを減らすことで価格を100万円以下に抑えることも可能になります。
農家には200V電源が既にあるので、充電の心配もありません。

ちなみに、農村地域ではガソリンスタンドがすごい勢いで減少していて、豊中市だけでも以前は15件あったのが今では4件に減ってしまったそうです。
遠くまでわざわざガソリンを入れに行くより、自宅で充電できるEVの利便性は農村地帯でこそ大きいのかも知れません。


このように「農家の軽トラ」にターゲットを絞り、個別のニーズに合わせてコンバートすることでコストと価値の最適なバランスを提供する、というのが西田さんの考えです。
大手メーカーはどうしても最大公約数的な大衆のニーズに応えるため、ある人にはオーバースペック、ある人には物足りない、という「帯に短し襷に長し」という仕様にならざるを得ません。
中小零細がコンバートEVで勝負できるとすれば「顔の見える関係」つまり、地域のユーザーに寄り添い、細やかなニーズに応えることが出来る、という点にあります。(逆に言えば、地域に根ざさないコンバートEVは事業として成り立たない)
地域の課題はそれぞれ異なります。西田さんの場合は農村地域に隣接していたため、「農村向けコンバートEV」という側面から取り組んでおられますが、他の地域ではまったく違ったアプローチがあることでしょう。

西田さんは農村向けコンバートEVの一環として、EVのモーター出力を直に利用する試みも行っています。
「おおさか地域創造ファンド」の助成金を受けて、三輪EVのモーター動力を散水ポンプに直結して利用する実証実験を行っています。今年度はその量産化を目指すとのこと。
「EVのバッテリーから電源を取って他の動力装置を動かす」という話は聞きますが、EVのモーター動力を直接利用するのは珍しいアイディアだと思います。
他にも、クレーンやウィンチなどでの活用も検討しているとのこと。農村向けならではの発想ですね。

今年3月に、西田さんは他の整備業者と共同で「EVジャパン」という会社を設立しました。
整備業者によるコンバートEVを事業化するための合弁会社です。
現在はコンバートEVの技術を学ぶ勉強会を行っている段階ですが、将来的には
  • 技術やノウハウの共有
  • スペアパーツの確保など資材調達
  • リースのためのファイナンス
  • コンバートEVの整備・車検
など、1社で行うより共同で行ったほうが効率のよい業務を集約していきたいとのこと。
「何よりも、一定の技術レベルやサービスをユーザーに提供することを重視し、参加事業者も腕に覚えのある技術者ばかりです。
今後、全国に仲間を増やしていく予定ですが、その場合もしっかりとした技量のある事業者を選んで提携していくつもりです。闇雲にビジネスを広げることは考えていません。
半田付けひとつ見ても、一流の技術者であるかどうかは分かります。プロとしてのこだわりや誇りを持っている人と一緒だと、自然といい仕事が出来ますから。
日本の零細企業には機械ではまねの出来ない技を持つ職人がいて、手の感触でミクロン以下の誤差を見極めるすごい人もいます。そういう町の職人が日本の技術力を支えてきたことはよく知られています。
これから発展していくEVには、まさにそういう技術力こそが必要となるでしょう。」
と西田さんはEVジャパン設立についてそう語っていました。

EVジャパンではコンバートEVの技術的理解を促すための「教材キット」も用意しているとのこと。
パネルに実際のパーツを取り付けて結線し、どのような部品がどういうつながりで動いているのかを一目で分かるように工夫されています。
この教材を使ってコンバートEVの説明会を全国各地で開催する予定だそうです。

西田さんが目指すのは、大手メーカーが囲い込んできたユーザーを、地元の中小企業の手に取り戻すこと。
「今までのような単なる製造・整備だけの2次産業でいたら、これからは仕事がなくなる一方。地域のお客さんと積極的に関わってその声なき声に応えられる3次産業に脱皮する必要があります」

西田さんとEVジャパンの今後の活躍に大いに注目です。

突然の取材の申し込みにも快く応えてくださり、お忙しい中たくさんのお話をしていただいた西田さん。
本当にありがとうございました。

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